ChatGPTは画像診断に使えるのか?放射線科医が語る限界と可能性

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放射線科医が感じる「限界」と「可能性」

AIが急速に進化するなかで、「画像診断にもChatGPTは使えるの?」という質問をよく耳にします。SNSでも“AIがレントゲンを読める時代”といった大きな話題が流れがちですが、実際の現場はもう少し複雑です。

日々、画像読影をしながらChatGPTを使っている立場から、実際のところどうなのか。どこまで期待できて、どこからは危ないのか。限界と可能性をまとめてみました。

ChatGPTは“画像を読めるAI”ではない

最初に結論をはっきりさせると、ChatGPTは単純写真・CT・MRIといった医療画像を“読影するAI”ではありません。

ChatGPTはあくまで“言語モデル”。
医療画像の解析を得意とするAI(ディープラーニング系)とは仕組みも得意分野も全く違います。

例えばCTやMRIは、階調やウィンドウ設定で見え方が大きく変わります。こうした微妙なコントラストこそが診断を左右しますが、ChatGPTの画像入力機能はそこに対応していません。
つまり、DICOM画像そのものを読み解き、細かな陰影差から病変を捉えるようなことは現状不可能です。

「ChatGPTに画像を送って診断してもらう」というのは、今の段階ではかなり無理のある使い方と言えます。

それでも放射線科医はChatGPTをどう使っているのか

“じゃあ医療では使えないの?”というと、そんなことはありません。
私自身、毎日のようにChatGPTを使っています。

使用してみて感じるのは、ChatGPTは「画像を読むAI」ではなく「医師の思考を整理するAI」だということです。

● 疾患や解剖を調べるときの補助

ちょっとした解剖の確認や、曖昧な鑑別の整理はすぐに返してくれます。
ただし引用元が明確でないため、必ず一次文献で裏取りが必要です。

● 鑑別に悩んだときの“壁打ち”

症例で悩んだときに「この症例で考えるべき鑑別は?」と投げると、意外な視点を示してくれることもあります。
見落としの回避や、思考の整理に役立ちます。

● 文献検索やガイドラインの要点整理

論文やガイドラインの要点を素早く掴むときに助かっています。
ただし、これも引用やエビデンスの確実性を自分で確認することが前提です。

ChatGPTを使うことで、知識の整理や情報収集の速度が確実に早くなった実感があります。

ChatGPTに“診断”をさせると精度が低い理由

実際に触ってみて、ChatGPTを診断に使うのは難しいと感じる理由があります。

● 臨床情報を統合できない

画像診断は画像だけで完結するものではありません。
症状、経過、検査データ、既往…
こうした背景があって初めて“意味のある診断”になります。

ChatGPTは、画像所見だけを投げて診断を考えさせた場合、背景を理解できず精度が落ちます。

● 微妙な陰影差を認識できない

低コントラストな陰影、淡いすりガラス影、わずかな形態の違い…。
これらはChatGPTが扱える情報の外にあります。

● 自信満々に間違える(ハルシネーション)

医学領域では特に、もっともらしい“嘘”を返すことがあります。
これをそのまま診断に使うのはかなり危険です。

こうした特性から、ChatGPTは「診断」ではなく「知識整理」の領域で使うのが現実的です。

ChatGPTが画像診断の未来にもたらす“可能性”

読むのは苦手でも、ChatGPTは画像診断の世界を大きく変える可能性があります。

● 教育・研修の効率化

正常像の説明、読影の流れの解説、鑑別疾患の比較…。
言語化が必要な部分はChatGPTの得意分野です。
研修医指導の効率は大きく変わります。

● レポート作成や資料作りがスピードアップ

読影チェックリスト、レポートテンプレート、依頼医向けの説明資料など、文章化が必要な作業はほぼ任せられます。

● 読影AI × ChatGPTで業務が軽くなる未来

将来的には
読影AI → 所見抽出
ChatGPT → 要約・文章化・説明
というハイブリッドが一般化するでしょう。
画像を“読むAI”と、文章を“整えるAI”が組み合わさると、医療の情報伝達は一気に最適化されます。

ChatGPTを安全に使うために気をつけたいこと

AIは便利ですが、医療は責任が伴います。

  • 患者情報・DICOM画像は入力しない
  • AIの回答を“正しい前提”で扱わない
  • 必ず一次文献で確認する
  • 診断には使わない
  • 医療者として情報管理の責任を忘れない

このルールを押さえておけば、ChatGPTは強力な味方になります。

まとめ:ChatGPTは“読影AI”ではない。

でも放射線科医の仕事は確実に軽くなる。

ChatGPTは医療画像を読むAIではありません。
ただし、疾患整理、壁打ち、情報収集、文章化といった“医師の思考を支える領域”では非常に強い力を発揮します。

使い方を間違えなければ、放射線科医の業務は確実に軽くなりますし、教育の質も上がります。

AIが苦手なこと、得意なこと。その線引きを理解することが、これからの画像診断に欠かせない視点だと感じています。

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